八王子某こども園。
増築の鉄骨現場。
お世話になっている所長からの依頼。
墨出し条件が悪かろうとも、あれこれ最善の策を探り、最も適した方法で仕事を進める努力をする。
今から35年ほど前は、そんな今の職人気質の仕事ぶりが信じられないくらい、世の中をなめていた男がいた。
10代の俺である(苦笑)
昨日の話のつづき。
当時厚木には多くの大学があり、土曜の夜などは、大学生を中心に、高校生、若者たちのギラギラとしたエネルギーに満ち満ちていた。
俺はそんなある大学の学生であった。
大学の近くに寮があり、食事付きで、風呂トイレは共同。
1年目は様子見で寮に入ったのだが、なぜか同じような遊び好きの奴はがりが集まった寮生活となった(苦笑)
夜な夜な、酒を飲みながら麻雀やチンチロリンにあけくれる日々。
麻雀をやる奴、テレビを見ている奴、エロ本を見ている奴。
そんなある日、いつものように俺の部屋で麻雀をやっていた。
すると外からオッサンがわめき散らしている声が聞こえる。
暇を持て余して、常にスリルを求めていた俺たちは、みんなで外に出て、オッサンを取り囲んで笑っていた。
絡んだのは俺たちである。
ひとしきり茶化し、飽きると部屋に戻り、また麻雀を始めたのだ。
何時間か過ぎた頃だろうか?
寮のおばさんが慌ててやってきて、全身を震わせながら、言った。
「今、右翼の人たちがやってきて、ガキどもを出せ!とナイフとアイスピックを突き付けられた」と。
街宣車でやってきていたらしく、10人ほどの顔が見えたらしい。
とにかく謝って帰ってもらい、警察にはすぐに電話したという。
まったくわからなかった!
俺たちはいつものようにバカ騒ぎしていたが、危機がすぐ近くにあったのだ。
警察からは、警備に行くまでは、襲撃の的になるゆえ、寮のすべての電気を消すように言われたという。
俺たちは真っ暗な中、タバコの火が灯る中で緊急に会議を開いた。
「ヤベェな」
「右翼だってよ、めんどくせぇ」
「そういえば、袖に日の丸と日本〇〇党って刺繍してたよ」
「バカ!それを早く言えよ!」(全員口を揃えて)(苦笑)
とはいえ、若くて勢いのある遊び好きな男たちである。
自分の腕試しをしたい欲求と、スリルを求めるバカ者の集団である(苦笑)
「来るっていうなら、やってやろうじゃねぇか!」
誰も反対しないところが、若さゆえの勢いだろう。
全会一致で、迎え討つ事になった。
工業大学の学生寮である。
廊下の突き当たりには、バイクのマフラーをはじめ部品、鉄パイプ、棒など、武器になりそうなものはいくらでもある。
すぐに臨戦態勢を整え、2階建ての寮の、1階で迎え討つ事にした。
風呂場の脱衣所に3名、その先の風呂場に3名、食堂に3名。
関係ない者には電気を消して部屋から出ないように伝達。
真っ暗な中、緊張感は最高潮である。
俺はほうきの柄を持ち、脱衣所で息を殺してはひたすら待った。
どのくらい経っただろうか。
廊下を歩く音が聞こえる。
「来たぞ!」
ゾクゾクするぜ!
血がたぎるぜ!
ほんの少し開けていたドアから廊下を見る。
一気にドアを開けると、目の前にいたのは仲間だった。
「警察が警備に来てくれたから、部屋に戻ろう」
その夜は戦場で寝るような緊張感があった。
この後数日間、おまわりさんは、夜警備に当たってくれた。
しかし、いつ襲撃されるかわからない。
警戒は解かずに、過ごすようにした。
しばらくして、警察が間に入り、右翼の会長と、この学生寮を経営している経営者のケツもちのヤクザが手打ちをする事になった。
俺はあの空気、あの場の光景をいまだ鮮明に覚えている。
ケツ持ちのヤクザは、坂口征二と伊吹吾郎を足したような角刈りでガタイが良く、圧倒的なヤクザのオーラがあった。
対して右翼の会長は、赤地に黒い模様のカーディガンを着て、顔もヘアスタイルも、ぴんから兄弟のそっくりな人だった。
爬虫類のような目つきで俺たちを見た。
「こうなっちまったらヤキ入れられても文句言えねぇな」
そんな話をしながら、この手打ちを見守っていた。
食堂からおまわりさんが出てきて、俺たちを見て和解が成立した事を伝えた。
俺たちは迷惑をかけた寮のケツ持ちのヤクザに謝りに行った。
「手打ちにしたから、もう心配しなくていい。今度からは相手を見てケンカするんだぞ」
たしか、そんな事を言って、寮の管理人室であるおばさんの部屋に入っていった。
俺たちは、この坂口征二似のヤクザにすっかり惚れてしまった。
入寮して1年。
駅前でバイトしたり、ナンパしたり、彼女を部屋に呼ぶには、寮では何かと不便ゆえ、俺は1年で寮を出て、駅前に近い1Kのアパートに引っ越した。
卒業して数年、学祭にOBとして参加した、寮のある仲間から聞いた話だ。
あの寮にはガラス窓にデカイ日の丸の旗が掲げられ、日本〇〇党と看板が貼られていたという。
学生寮ではなく、右翼の寮になっていたというのだ。
あの和解条件とは、果たしてどんなものだったのか?
坂口征二似のヤクザが右翼に押し切られたのか。
右翼に寮を売って金に換えたか、
あるいは、最初からこの寮はこうなる話がついていたのか、
真相は俺にはわからない。
ただ確実なのは、俺たちの一件があってから数年後、寮は右翼団体の寮となっていたという事。
あの迎え討つ準備をして待つ緊張感は最高にスリルがあった事。
俺の青春 本厚木篇
まだまだ、面白い話があるので、またいつの日か。
今度は社会人への登竜門、俺のバイト遍歴を書いてみたいね。
追伸
あの夜、もし右翼が襲撃してきたら、どうなっていたんだろうな。
半殺しにされてたか、ボコボコにしていたか。
ケツ持ちのヤクザの気風に男を見た。
吹けよ、俠の風!
呼べよ、俠の嵐!
心に日本刀‼️
甦れ武士道‼️
〓Japanese Hardcore & Soul〓
GUILLOTINE TERROR
吼流魅KURUMI